コラムColumn

2023.05.31コンサルティング

税金を抑えるかVS剰余金を増やすか #ステージに合った財務計画を

今日は、節税か?利益剰余金の積み上げか?をテーマとして書いていきたいと思います。

このテーマは、経営者により考え方が大きく分かれる分野かと思います。
ですので、あくまでも見解の一つとして読み進めて頂ければ幸いです。

まずは大枠について
ご存知の先生も多いとは思いますが、一応利益について復習したいと思います。
まず利益ですが、5つの利益に分けられます。

同業の先生や会計事務所様・銀行様等との会話の中で“利益”というワードが出た時に、どこの部分の利益のことを言っているのか、理解できていればOK!理解できてないようであれば、以下イメージで覚えて頂ければと思います。

1、売上から変動費が引かれて最初の利益である【売上総利益】が出ます。
わかりやすく言えば、粗利ですね。
変動費は、歯科医院の場合は外注技工料+材料消耗品費となります。
※売上に比例してお金が出ていくものと捉えてください。

上記のように一発目のキャッシュアウトがあり、残りが粗利益です。

2、粗利益から以下の経費が引かれ【営業利益】が出ます。
俗に言う“本業での稼ぎがどれぐらいあるか”を見る指標となります。
歯科医院は歯科医療を提供する事業ですので、当然ですがこの本業の利益がとても重要です。

経費の中には、人件費やその他の各経費が含まれます。
人件費には、法定福利費・福利厚生費も含みます。
水道光熱費・旅費交通費・接待交際費等も各経費の中に入ってきます。
※減価償却費もここの経費に含まれますが、実際にはキャッシュアウトしないものとなります。
※法人の役員給与はここの経費に含まれ、個人事業の場合は、最後に残ったお金が取り分となります。


*医療法人と個人事業で利益に大きな差異があるのはこのためです。

3、次に営業外利益・営業外損失をプラマイして【経常利益】が出ます。
4、その次に特別利益・特別損失をプラマイして【税引前当期純利益】が出ます。

そこから税金の額が計算され、納税するのが流れとなります。

5、納税後の数値が【当期純利益】となります。

一般企業は経常利益・税引前当期純利益で大きなプラマイがあるケースがありますが、一般的な歯科医院の場合は、あまりここの項目は考えなくても良いかと思います。

ここまでが、収支(利益)の基本となります。

では、ここから本題に入ります。

節税するか!利益剰余を積み上げるか?

これは、税引前当期純利益とリンクします。
税引前当期純利益を低くすれば納税額は減りますので、俗にいう節税となります。

◯とにかく税金は多く収めたくない
◯国に無駄にお金を払うならなんか欲しいものを買ったほうがいいでしょ
◯お金が一気に出ていくのはメンタル的に嫌だ


上記のような考え方で、毎年節税を行なっている医院様が多いのではないかと思います。
納税額は少なくなるので、「よし!これでキャッシュアウトを抑えることが出来た〜!」
となるわけですね。

では逆の場合はどうでしょうか?

◯税金は払うべきでしょ
◯よくわかんないから会計事務所に言われたままやればいいでしょ
◯全然納税に対して興味がないからどうでもいいかぁ


ちょっと極端かもしれませんが、上のような考え方。
特に、税金は払うべきでしょの考え方で、節税を一切行わなかった場合は、税金は最大で納めることとなります。
ある程度の売上があれば、そこそこの納税額となるでしょう。

皆さんはどちらが良いですか?

様々な考え方・意見があると思います。
が、今日ここでお伝えしたいのは以下となります。

「医院のステージにより考えて欲しい」

です。

至極、当たり前のことを言っています。
ステージとは、医院の置かれている状況(現在地)ということです。

1、クリニック開業から2.3年のケースで売上の角度は一般的な状況である場合
まだまだお金(預金)が潤沢にあるわけではないケースが考えられます。
2年目になんとか黒字化して、3年目はそこそこの利益が出るというような状況です。
そこで、節税を行なって税金を下げる行動をとるとどうなるか?

納税額は少なくなりますが、医院にキャッシュは積み上がりません。

2、開業から10年ほど経過し、順調に売上も上がり安定期にある状況である場合
現金預金が潤沢にあるケースであれが、節税で納税額を抑えるのは良いでしょう。
潤沢というレベルは売上の6ヶ月分を目安で考えるのが宜しいかと思います。

月の売上が500万であれば、現金預金は3,000万以上
月の売上が800万であれば、現金預金は4,800万以上


2020年から今年の初めまで新型コロナにより、経験したことのない世界に身を置きました。
幸いなことに歯科医療業界はあまり大きなダメージを受けることはなかった稀有な業態であると言えます。
ただこの先、またこういった何かしらのマイナスの事態が発生しないとも言い切れません。

その時に事業の存続を左右するのは何か?
答えは、手持ちのお金(手元資金)です。
要は、現金預金をある程度潤沢に持っている医院が生き残るということです。
業績や規模は関係なく、月商に対して6ヶ月以上〜お金を持っていれば、乗り切れる可能性が格段と上がるということです。

ここで、毎年節税節税でお金を積み上げていないとどうなるか?
仮に数ヶ月でも診療が止まってした場合、現金がなくなり事業として立ち行かなくなり倒産。
そういった状況が待ち構えています。

例を一つ挙げてみます。
同じ売上(年商)100,000,000円を達成した医療法人の歯科医院AとBがあると仮定します。
以下の数値は関連する様々なケースや現況等は考慮してませんのでご了承ください。

A医院
過度な節税をせずに2,000万の税引前利益を残した

変動費+その他経費の合計=60,000,000円
税引前当期純利益=20,000,000円 
納税額=6,376,100(様々な関連要素は無しとしての参考値)
税引後当期純利益=13,623,900 

B医院
納税額を下げるために無駄に1,000万を使って利益を減らした

変動費+その他経費の合計=70,000,000円
税引前当期純利益=10,000,000円 
納税額=2,695,700(様々な関連要素は無しとしての参考値)
税引後当期純利益=7,304,300

上記AとBの違い

*納税額 3,680,400 Bが収める額は少ない
*利益剰余額 6,319,600  Aが多くお金を積み上げた

納税額を減らすために1,000万の無駄遣いをしたB医院は、納税額は減らせたが利益剰余金の積み上げは出来なかった。
過度な節税をしなかったA医院は、納税をしっかり行なって利益剰余金はB医院の約2倍となった。

どうでしょうか?
ちょっと極端な例かもしれませんが、実際にこれだけの違いが生まれるということになります。

医院経営を事業としてみた時に必要なことは、資金が潤沢にあるかです。
良い時も悪い時もあるでしょう。
ずっと良いままで登り続けられればそれに越したことはありませんが、万が一に備えることも経営者の大事な仕事の一つです。

節税。
それ事態が悪いことだとは思いませんし、理解した上で行う節税は非常に効果的であると思います。
ですが、何もわからずして行う節税は、マイナスでしかないと思います。
納税額が減らすということは利益を減少させるとイコールです。

それをしてまで節税に目を向けるメリットがあるのか?
自院のステージは既にそこに達しているのか?

よく考えて対策を行うことをお勧めしたいと思います。

顧問税理士や会計事務所の担当者によっても考え方は違います。
社長である院長ご自身が、自院のステージを把握することで正しい財務対策が出来るのではないでしょうか?



「たかが数値。されど数値。」

医院の今から未来をつくる。
歯科医院発展応援団 吉澤 貢

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