コラムColumn

2025.04.30開業支援

融資が厳しいからテナント開業で... #融資額が少ないから安全?

今回はテナントでの歯科医院開業について書いていきたいと思います。
昨今の建築資材の高騰や器材の値上がり・人件費の上昇等により、歯科医院を開業するための必要資金は増加の一途となっています。最低でも今後数年は今のような状況かあるいはもっと厳しい状況になることが想定されます。

ここで開業のスタイルについて整理してみたいと思います。
開業スタイルは大きく以下の3つのパターンに分けられます。

1、土地購入・医院を建築しての開業
2、居抜き物件での開業
3、テナント開業

今回のテーマである3、テナント開業の前に、一般的な開業スタイルである1についてお話していきます。
都市部を除いて一般的な開業の仕方は、1の土地を購入(賃借もあり)して上物を建築するパターンです。土地・建物全てがご自身の資産となるメリットがある半面、初期費用が大きくかかってくるのがデメリットとなります。現在建築費用は坪単価120~150万程度が相場となっており、60坪サイズでも7,200~9,000万はかかります。それに外構費用が約1,000万〜1,500万となり、消費税を入れると9,020万〜1,15億が建築に関わる費用となります。

これに、器材 5,000万前後・運転資金 2,000万・開業準備費 500万・他つなぎ融資費用・取得税等で1,000万として、合計で1.75億〜2.00億の初期費用がかかる計算となります。 ※器材は診療スタイルにより前後、つなぎ融資等は土地を現金で購入するか否かでも変わってきます。

自己資金が潤沢にあれば、このパターンでの開業でも大きな負担にはなりません。自己資金をお持ちではなくても、親御さんからの援助がある等である程度資金を用意できるようであれば、大きいストレスを抱えることなく開業は可能なケースもあります。 ただ、そうでない場合、自己資金が1,000万以下またはほぼ無しというケースでは、月々の返済が経営を圧迫する可能性があることを忘れてはいけません。

また、銀行の歯科業態評価が低いケースでは、そもそもそれだけの融資を勝ち取れないケースもあります。歯科医院が減少傾向に転じた今そしてこれから、真っ当に医療提供をして健全な組織運営ができれば、ブルーオーシャンとは言いませんが、伸びしろしかない業態であることは疑いのないところなのですが、銀行さんや信用金庫さんがそういった目線であるかというと、答えはNOです。

銀行により、歯科業態の評価が大きく分かれているのを融資交渉のたびに実感していますが、1億までしか融資できないだったり、融資はできても15年返済だったり、先生方の肩に大きくのし掛かる条件提示をされることが今後増えるように思います。仮に2億借りることができても15年で返済するには、元金返済の月額がかなり大きくなってしまいます。

例)
借入金額 200,000,000円(元金均等)
据置 12ヶ月
金利 2.0% ※信用保証協会等は考えず
返済回数 180回(15年)

上記例の条件で試算すると、元金の返済額は約119万円/月となります。利息は、約330,000円/月から徐々に減少していく形となります。据置期間の1年は利息だけなので良いのですが、元金返済が始まる2年目以降は、1,500,000円/月程度の元金+利息返済となります。何が言いたいかというと、元金返済が始まる2年目までにある程度の売上を上げていかなければならないということです。

仮に2年目の初月で5,000,000円/月の売上をコンスタントに出せるようになったとして、以下試算してみます。

例1)
売上 5,000,000円
変動費 1,000,000円(20%として)
粗利益 4,000,000円
人件費 1,000,000円(スタッフ4名)
他経費 1,500,000円(利息含む)
医業利益 1,500,000円

イメージわかりますでしょうか? 税金等を無視して考察してますが、先生のお給料を含まない状態で利益は1,500,000円となっています。ここから元金返済 1,190,000円をすると、残りは310,000円となります。これで先生の生活が成り立てばいいのですが、如何でしょうか? ほとんどの先生方は難しいのではないでしょうか? 元金返済は残った利益からとなります。上記の売上だと生活を含めて事業として継続させていくのは非常に厳しいということがおわかり頂けるのでないかと思います。

例2)
売上 7,000,000円
変動費 1,400,000円(20%として)
粗利益 5,600,000円
人件費 1,500,000円(スタッフ6名)
他経費 1,500,000円(利息含む)
医業利益 2,600,000円

では、スタートから角度がついて7,000,000円/月を売上る場合はどうなるか? 上記例2として試算しました。医業利益は、2,600,000円と大きく増加しています。ここから元金返済 1,190,000円を引くと、1,410,000円となります。税金等を差し引いてもある程度のレベルの手残りになることがわかります。ただ、2年目の頭で7,000,000円を超える売上を上げるのは並大抵ではありません。もちろん絶対に無理ではありませんが、そこに到達するには、事前準備や立地・ベクトル共有・テクニカルスピード・接遇等を全て高いレベルでこなして初めて達成出来ると考えなければなりません。

では、本題である3のテナント開業について考えていきましょう。
テナント開業のメリットとして一番にくるものは、初期費用を削減することが出来ることです。土地代がかからずに建築費用も大きくかからないので、初期費用を大きく削減することが可能となります。デメリットで一番最初に来るのは、自分の資産にならないというところでしょうか?

まず最初にテナントの費用についてですが、基礎から作らなくてもいいのは勿論そうなのですが、配管を通して床上げし、ユニットやCT等の器材の重みに耐えうる設計をして内装を行わなければなりません。費用相場は地域性もあるかと思いますが、800,000円/坪~1,000,000円/坪といったところでしょうか。仮に50坪のテナントであれば、4,000万〜5,000万が内装費でかかるということになります。

それに前述しましたが、器材・運転資金・開業準備費等を加算すると、1.2億〜1.3億ぐらいになってくるかと思います。(保証料もかかってくるので大きな金額となるケースもあります)意外と高いな...と思われた先生が多いのではないでしょうか?※内装費用はテナントの初期状態により変わるのであくまで目安として 

まあ、それでも2億まではいかないから、返済に追われることもなさそうな感じはしますよね。ですが一点テナント特有のものがあります。それは家賃です。開業と同時にまたは開業前からかかってくるもので、地域や築年数等により金額も様々ですが、一般的には、坪1.5万前後ぐらいでしょうか? 50坪×15,000円=750,000円となります。あれ?家賃だけで750,000円もかかるの!?と思われたかと思います。そうです、しっかりとかかります。せっかく初期費用を安く抑えて開業出来たのに、先々大丈夫かな〜...

例)
借入金額 120,000,000円(元金均等)
据置 12ヶ月
金利 2.0% ※信用保証協会等は考えず
返済回数 180回(15年)

返済シミュレーション)
元金返済額 714,285円/月
利息 約200,000円/月から減少していきます
2年目以降の返済総額 900,000円/月

家賃 750,000円に返済900,000円で、合計1,650,000円。???土地から開業よりも厳しいのがおわかり頂けるかと思います。(あくまで目安)ちょっと謎な展開ですよね。ただ、問題なのは2年目以降よりも開業からの1年です。何故かというと、1年目の売り上げが低い時期でも、関係なく家賃がかかってくるからです。初月15万点、2ヶ月目20万点、3か月目30万点と順調に上がっていっても、家賃は初月750,000円、2か月目750,000円、3ヶ月目750,000円... となります。

診療報酬が2か月先と考えると、キャッシュアウトが先なので、どんどん運転資金は減少していくことが容易に想像できると思います。2,000万という一見潤沢な運転資金を確保したとしても、湯水の如くなくなっていくのが現金というわけです。初期費用の関係で土地からの開業ができないケースはこれから増加すると思います。ただ、だからといって安易にテナントでの開業に舵を切るとどうなるのか? しっかりと試算してから動いて頂きたいと思います。

一番重要なのは、自己資金を貯めること!それは親御さんからの援助であっても構いません。お金があれば様々な開業パターンから検討することが可能となります。
逆にお金がない場合は、本来希望する開業スタイルから変更しなければなりません。安易に「テナント開業だと安全だ」という考えを持つのはやめましょう。非常に危険です。テナント開業して良い先生は、確固たる自信があり、絶対に売上を上げれる自信がある先生のみ。そうでなければ、一旦開業を再検討するのも方法の一つです。

ご自身が開業する意味意義はなんなのか。
ご自身の年齢やライフステージ等をしっかり考えて、開業のパターンを模索してほしいと思います。
安易にテナント開業をしないこと。テナント開業で得るものが明確であれば進んでよし。
いずれにしても、試算をしっかりと行い、あとから後悔をしないように綿密に練って開業に向けて進んで欲しいと思います。


 

「たかが数値。されど数値。」

医院の今から未来をつくる。

歯科医院発展応援団 吉澤 貢

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