コラムColumn

2025.12.26スタッフマネジメント

スタッフへの対価も考えた売上目標(ビジョン)を #医院成長の礎を大切に

今回は、スタッフへの対価を含めた売上目標(ビジョン)についてお話したいと思います。
ビジョンというと少し難しいように感じますが、シンプルに売上目標(収支目標)を立てる際に必要且つ重要なことですので、ご一読頂ければと思います。

「宝であるスタッフへの対価(給与)が抜け落ちてはいないでしょうか? 」

良く会話の中で出てくるのが、以下のようなものとなります。
・適正な人件費率はいくらでしょうか?
・昇給は他医院ではどれぐらいですか?
・固定費は削れるものがほとんどないし、人件費は上がる一方だし...
・他の医院の歯科衛生士の給与はどれぐらいでしょうか?

間違った会話ではありませんよね?スタッフに対して目が行っている段階で◯と言えるのではないでしょうか?ただ、この考え方は角度を変えると、対価を抑える方向に走るためのものとなってしまう“危険”が潜んでいるのではないかなと思います。言うならば、右ならえの危険です。

◯適正な人件比率
給与・賞与・法定福利費・福利厚生費を全て足し算して考えますが、一般的には25~30%程度になってきています。医院の経費(人件費/他固定費)のバランスを見るためには重要な指標となりますが、医院ごとに他経費の内訳は大きく変わります。また、診療のスタイル等により変動費も5%前後の差異はあります。その状態の中で3%程度高いとか5 %程度低いといっても、他の経費とのバランスなので、ナンセンスとも言えます。人件費は他経費とのバランスであり、結果論でもあるということを忘れてはいけません。

◯昇給は他医院ではどれぐらい
これは、極力人件費率を抑えたいと考える先生方から多くくる質問となります。または、ある程度売上成長があるものの手残りがさほど増加してないケースで多く見られます。手残りを増やすために昇給は極力少額に抑えたいというのが本音というところですかね。ただ、本来の考え方は、医院への貢献度・個人の成長を軸として設定するものです。成長期の医院は昇給は大きなデメリットと感じるケースは少ないですが、安定期に入ってくると、毎年の売上は大きく変動しないことから昇給による人件費の増加が気になってきてしまうのだと思います。

◯固定費は削れない... 人件費は上がる一方..
これに関しては、ある程度の先読みは出来るはずです。物価の高騰はここ数年の悩みどころであり、先々は不透明といえども大きく下がるということは今のところ考えられないところではないでしょうか?世の中の動きにアンテナを張ることで物価高騰はある程度先読みが可能。人件費については、ここ数年最低賃金の増加が続いており、経営者側としては頭が痛い部分であるのは間違いありません。ただ、これについてもある程度先読みできることですので、それで一喜一憂というのは、時代の先読み不足ともいえます。一言で言えば心の準備不足。数年後にはこうなるというある程度のレベルでの先読みが出来ていれば、それに対して備えることが出来るものです。

◯他の医院の歯科衛生士の給与はどれぐらい
これもよく聞かれる質問の一つです。自院の給与が高いのか低いのか、はたまた平均的なのか。他医院を知るということは悪いことではありません。これについては2通り考えられます。一つは自院の給与が高すぎる場合、昇給額を下げて周りに合わせようとしてしまうケースがあります。これは完全に市場平均優先の考え方で、スタッフに対してのリスペクトに欠けるものと言えるのではないでしょうか。もう一つは給与が低すぎる場合、周りにとりあえず合わせようとするケースが多いかと思います。ただ、今まで低い給与で雇用していた先生の多くは“人”に対してのリスペクトが不足しているケースが多くあります。他に合わせてはまた開き、また合わせては開き.. いつまで経っても追い抜けない状態が続く可能性がありますね。

じゃあ、どう考えるべきか!
様々な感が方がありますので、どれが正解かと言うものではありませんが、一つ言えるのは、スタッフを“宝”と思う姿勢がまずは大事と言うことです。歯科医院は労働集約型の代表的な業態です。人が居ないと適切な歯科医療提供は出来ません。そこの部分をしっかりと意識出来ていれば、自ずとスタッフを“宝”と思うでしょう。ましてや、この先はコ・デンタルの減少が顕著に現れてくる時代ですので、そういった意識がないと永遠に人に悩むことになります。

来期の目標を立てるとき
一般的に多いのは、以下のパターンかと思います。
目標売上から考え→変動費を引いて→粗利益を出す→他固定費を計算し→必要利益を考え→その差額から人件費を割り出す

ダメな考え方ではありません。今期実績を元に来期を立てるわけなので、成長率◯%で目標を立ててから下に降ろしてくるのは至極当然の流れではあります。
※医院の経費数値を把握していて、人件費率も適正に収まるケースもあるので、一概にNGということではありません。

可能であれば、以下の考え方で進めて欲しいと思います。
人件費を考える→必要利益を考える→他固定費を足し算する→粗利益(限界利益)を出す→変動費を落とし込む →目標売上が出る
このやり方が、本来望ましい考え方であると思います。

本来出したい人件費から考える。
そうすることで自ずと目標売上は決まってきます。仮にそれが前期と多く乖離していたとしてもOKです。成長率を意識して2年後にここに到達する!3年後に到達する! そういう意識を持てればOKなんです。今年実現出来ないのが明らかなのであれば、下方修正(人件費)して、目標達成年に必ず達成できるように毎日を過ごす。
また、人件費率の怖いところは、スタッフ合計の額が売上に対して何%かということなので、一人ひとりの満足度とイコールではないということです。人件費率が低くても、スタッフ人数が少なく生産性が高ければ、満足度は高いケースもあり、逆に、人件費率が高くても雇用人数が多く生産性は低く、一人ひとりへの給与は低いケースでは満足度は低いということになります。

なので、数値だけで判断は出来ないというのは覚えておいて頂きたいのと、雇用バランス(人)を常に意識する必要があることを腹に落としておいて欲しいと思います。

例) スタッフ構成:受付-1 DA-1 DH-4 / チェア 4台  / 前期売上 8,800万
※個人事業で7年目の歯科医院

・出したい対価(給与+賞与 額面)
受付-350万
DA-350万
DH-420万*4人=1,680万
合計 2,380万 
※法定福利費・福利厚生費を加味し、約2,900万

・税引前利益   3,000万(目標額)
・他固定費 1,500万(昨年実績より)
・変動比率 22.0%(昨年実績より)

試算>
(人件費 2,900万+他固定費 1,500万+税引前利益 3,000万)=限界利益 7,400万
限界利益 7,400万÷(1-変動比率0.22)=目標売上 9,487万

今期の目標売上は、9,500万となります。
これが現実的か否かは、前期内容(各データ)を様々な角度から見て検討する必要がありますが、スタッフに出してあげたい対価を落とすと、この売上が必要なことはわかります。現実的に目標として厳しい場合は、固定費の見直しや税引前利益の減額が可能かを精査。それでも厳しい場合は、2年後の目標として設定することが可能となります。

最後にもう一度
目標売上を立てる際に、
「宝であるスタッフへの対価(給与/賞与)が抜け落ちてはいないでしょうか? 」
スタッフ“宝”の顔を思い浮かべてみることで、より活気に満ち、永続性の高い歯科医院を作り上げることが可能になるのではないでしょうか?



「たかが数値。されど数値。」

医院の今から未来をつくる。
歯科医院発展応援団 吉澤 貢

CONTACT US

歯科に関する事なら
弊社にお任せください。
お気軽に
ご相談・お問い合わせください。

VIEW MORE