コラムColumn

2023.01.31コンサルティング

目標値の設定 #根拠に沿った設定と整合性

今回は目標値の設定について書いていきたいと思います。

個人事業として営む歯科医院は、1月がスタートの月となります。
今月初めまたは昨年暮れに目標値を設定し、スタッフと共有した医院様も多いのではないでしょうか?

早速ですが質問です。

Q,目標値はどうやって立てていますか?
また、目標値を設定する項目はどのようなもので、その根拠はなんですか?

如何でしょうか?

一般的は昨年の売り上げがいくらなので今年は◯%UPのいくらを目標に。
そういった形が多いのではないでしょうか?

経営していく中で売上は必須ですので、売上目標というのも勿論必須事項となりますね。
ただ、この売上目標が根拠のあるものなのか、根拠がなく謂わば、気合い・願望のようなものなのか。
どうやってその数値を叩き出しで目標値としたかが重要です。


例えば、A医院の昨年の年商を80,000,000円としましょう。

院長:今年は10%UPを目指して、88,000,000円を目標としましょう!
Q,この800万はどうやって上げますか?
院長:自費を伸ばしていけば可能かなと思います。
Q,自費を伸ばすためになにか行っていますか?
院長:スタッフの知識力を上げて、啓蒙していけばある程度伸びると思います。
Q,いつからその知識力を上げる取り組みをするのですか?
院長:今年どこかのタイミングで院内MTGでもしようと思っています。

どうでしょうか?
これは目標には到達しないパターンですよね。
運良く到達する可能性はありますが、それは例えば全顎的な補綴等で、人数ではなく単価が高い人が多くいる場合に限定されてくるかと思います。

自費は金額に目が行きがちですが、金額は単価が高いものを契約できればポンと上がるものです。
人数は啓蒙力(医院力)が試される部分となります。 例えば人数を無視して金額だけを見て、昨年は自費売上が2,000万だったから、今年は2,500万にしよう! と息巻いたとします。

たまたまロングスパンのブリッジが多かった。金属床が多かった。インプラントの複数埋入が多かった。等が重なって1年の売上が上がっていた場合、翌年は一気に半減ということにもなりかねません。
人数を意識して日々適切な啓蒙を行っていると、金額の大小はあれど、そんなに極端に落ちることはありません。 

勿論、自院の自費コンテンツの内容にもよりますので、コンテンツごとの契約人数と単価を分けて管理しておくことで、より信憑性の高い目標設定ができるということです。
また、そうすることでやるべき取り組みが可視化しやすくなるので、成長の速度も格段と速くなります。

例えば、B医院の昨年の年商を60,000,000円としましょう。
※自費は10%もなくほぼ保険診療の医院(開業3年目)

院長:今年の目標は20%UPの72,000,000円にしましょう!
Q,この1,200万はどうやって上げますか?
院長:レセプト枚数を増やして人数を見れば可能じゃないでしょうか!
Q,レセプト枚数は母数なので、1,200万UPと直接の関わりはないですよ...
院長:であれば、日々の患者数を上げていけば可能じゃないでしょうか!
Q,どれぐらいあげれば可能ですか?
院長:そこまでは計算してません。。
Q,1,200万上げるということは月に100万です。何人増えれば達成しますか?
院長:何人ですかね???

上記はちょっと極端ですが、実際にこういった感じで目標設定している医院もあるように思います。
最後のQは、1回あたり診療単価がわからないと答えられない部分となります。
※レセプト平均点にばかり気を取られていると、頭に入っていない数値となります。

例えば、昨年の1回当たり診療単価Ave,が850点の場合
100,000点/850点=117.6人 となります。
稼働日数を20日とすると、117.6/20=5.88人
1日6人増加させなければ達成しないということになります。

年商6,000万ですと、チェア台数は3台または4台になるかと思います。
3台の場合、6,000万はほぼMAX値となるので、ユニットの空き枠がないことが想定されます。
その中で7,200を達成しようと思ったら、チェアの増設とマンパワーの拡充が必須。
もっというと、チェアの拡充は昨年のうちに手配し、マンパワーの拡充による経費の上積みは頭に入っていなければなりません。

今までと同じスタッフ数で1,200万の売上増ということであればそのまま利益として残りますが、何かしらの拡充が必要な場合は、その分のキャッシュアウトを理解した上で目標を掲げなければなりません。

目標を立てる際に重要なこと
1、自院の現在のポジション
開業から何年目で今どのポジションにいるのか?
成長期なのか、安定期なのか。

2、残したい利益はいくらか?
医院経営をしていく上でキャッシュの上積みは必須です。
毎年いくらずつストックしていきたいか定めてかかるのが得策です。

3、変動費・固定費はいくらか?
変動費は、歯科医院経営で言えば、外注技工料金+材料費となります。
売上が上がると比例して上がる費用となり、自院の変動費が何%なのか知っておく必要があります。
※損益分岐売上は変動費がわからないと算出できません。

4、財務諸表に表れない返済額はいくらか?
多くの医院は、開業時に銀行から融資を受けています。
財務諸表には支払利息は経費として記載されてきますが、元本に関しては記載されません。
利益の中から返済するものだからですね。

財務諸表の数値だけを見て、損益分岐や目標値を立てると、本来自身の生活費として確保して数値(金額)が丸々元金返済で持っていかれるということが起こり得ます。
ここ最近の開業ですと、月に60万・80万という元金返済額の医院様も多く見られます。
これが抜けていると.... 生活費がない!!! なんてことが起こってくるわけです。

また、減価償却費も意識することが重要です。
減価償却費は経費の中に入っており、財務上は赤なのですが、実際にはキャッシュアウトはしません。
なので、実際のキャッシュと財務諸表を見て計算した数値とは乖離して当然のものとなります。
事業を営む上では、黒字の連続が望ましいのは言うまでもありませんが、減価償却を考えた時の実際のキャッシュの増減や損益分岐売上も知っておいた方が良いかと思います。
※開業から間もない医院は特に、キャッシュ残が安定しないので、実際に必要な売上がいくらなのか知る意味で減価償却費を差し引いた経費額を把握するのは重要なことです。

目標値を設定する項目
年間目標を立てる際にスタッフさんと共有する項目はなんでしょうか?

一般的には、売上額・レセプト枚数の二点を必須項目としている医院が多いかと思います。
勿論、それは必須事項なのでOKなのですが、ある意味この二点は結果論という見方も出来ます。
生産性が上がればレセ枚は増えますし、自費が上がれば売上額は増加します。

重要なのは、売上額・レセプト枚数を増加させるための各項目の目標値設定です。

例えば売上額
歯科医院の売上=患者数×単価です。

ここで考え方は2つあります。
1、患者数を増加させたい
この場合は、1日の来院数を如何に増加させるかを考える必要があります。
ユニット回転率に余裕はあるか?処置ごとのアポ枠タイムは適正か?スタッフ数は足りているか?etc..

2、単価を上げたい
この場合は、自費への移行が一つと施設基準取得による点数のUPが挙げられます。
自費移行の場合は、啓蒙の流れや医院の自費コンテンツの整理、MTGによる共有が必須ですし、施設基準取得については、前もっての動きが必要になります。

レセプト枚数
これは成長期の医院であれば特に気になる項目ですが、関わるのは以下の2つです。
1、新患獲得
安定した流入があるとレセ枚数は必然的に増加傾向となるのと、新患がファン化しメンテへ流れることで安定母数を作ることが出来ます。

2、メンテ患者数
これが一番重要です。母数の上積みの元となるのはメンテです。
新患で来院して全顎的な治療を終え、メンテへINし、メンテを継続して定着する。
これができる医院は、レセ枚がどんどん増加していくことになります。
逆にどこかのタイミングでドロップが起こる医院は、一定の高さでレセ枚はストップしてしまいます。

上記の2つの目標値を設定するためには、以下のような項目の数値設定が必要となります。
総来院数・メンテ患者数・キャンセル率・急患率・自費人数・自費売上・物販処方人数 etc...
これらの項目をクロスして数値目標を設定することで、適切な目標設定が可能となります。

例えば、平均点
売上をレセ枚で除して、1,350点
高点にならないからOK! ではないですね。
売上を総来院で除して1回あたり点数が自院の過去値と近似しているか確認が必要です。

総来院数・レセ枚数とメンテ人数の関係
メンテを月に1回の来院として、治療患者の月回数は1.8~2.0をクリアしているか?
基準値から大幅に乖離している場合は、上記3項目のいずれかの設定がおかしいということになります。今の医院のの仕組みは無理な数値であれば、目標値として設定するのはナンセンスとなります。

上記のように、関連する項目どうしを見てクロスさせて確認したうえで目標値を設定することが一番大事なことです。 それぞれの項目を肌感覚で単独にて目標設定すると、整合性が取れず意味のない目標設定となってしまいますので、ご注意いただければと思います。

まとめます。
目標値の設定は、医院の現在・過去・未来を見て立てること
経営上重要な数値(レセ枚・売上)は、他項目の数値からの結果であること
それぞれの項目の整合性が取れて、初めて使える目標値となること


医院の状況を見て、未来の到達点を見て、現在辿り着きたい位置を定めるのが目標値の本質だと思います。様々な項目をクロスで確認して意味のある目標値設定を行い、納得した上でチーム全員で共有し、1年その目標に向かって歩幅を合わせて進むのがベストと言えるのではないでしょうか。



「たかが数値。されど数値。」

医院の今から未来をつくる。
歯科医院発展応援団 吉澤 貢

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