コラムColumn

2023.09.28コンサルティング

固定費を知ろう #固定費を知らずしての経営はありえません

今回は固定費について書いていきたいと思います。
固定費と聞いて???マークの先生は、このコラムで大枠をしっかりと掴んで頂きたいと思います。
また、損益分岐売上についても同時に触れていきますので、是非最後までご覧ください。


 

固定費を知らないと何が起きるか?
◯根拠のある売上目標が立てることが出来ない
◯どんぶり勘定になり、利益が先読み出来ない
◯自院の損益分岐点を出せない
◯そもそも根拠に基づいた経営戦略は組めない


 

固定費は、歯科医院を経営していく上で欠かせないものであり、また経営数値を策定するために重要な数値となることを覚え、理解して欲しいと思います。


 

固定費とは何か?

A,事業を営む上で、売上と関係なくかかる費用。


 

わかりやすく言うと、売上が仮に0でもかかる費用です。

2020年から3年に渡り猛威を振るった新型コロナのような、事業に影響を及ぼす何かがまた訪れる可能性も0ではないと考えると、売上が0という月がある可能性も全くないとは言えません。


 

毎月会計事務所様からいただく資料(試算表)に、損益計算書と貸借対照表があるかと思います。可能であれば、先生のお手元に損益計算書をご用意ください。色んな科目が並んでいると思います。科目種類の並び方は会計ソフト等により違う部分はありますが、考え方は一緒です。


 

固定費は2つの要素から成り立つ

固定費は売上に関わらず出費するものとご説明しましたが、大きく2つに分けられます。



1、人件費

人件費は、経費(固定費)の中でも大きく負担となる費用です。


 

人件費の考え方

給与賃金・賞与・法定福利費・福利厚生費 以上4つの項目を合算したものが人件費となります。
※医療法人の場合は、ここに役員報酬が入りますが今回のコラムでは個人事業のケースで考えていきます。



2、人件費以外の経費

その他の経費は、会計ソフトや依頼している会計事務所様のフォーマットで変わる部分がありますが、概ね以下のような科目となります。※以下一例として記載します。


 

広告宣伝費  自院のサービスを対外的に知らせるためにかかる費用

旅費交通費  セミナー等で移動した際にかかる交通・宿泊等の費用

減価償却費  資産の減少に伴う経理上の費用

賃借料    土地や建物を賃借している場合にかかる費用

リース料   器材等をリース契約した際に支払われる毎月の費用

書籍代    知識の向上やスキルアップのために購入する費用

通信費    通信サービス全般にかかる費用(固定電話・インターネット関連等)

研修費    スキルUP・知識向上・教育・トレーニング等にかかる費用

水道光熱費  水道・電気・ガス等にかかる費用

租税効果   損金算入できる税金や会費等でかかる費用

接待交際費  取引先やビジネスパートナーとの関係構築のため会食等にかかる費用

損害保険料  損害に備え契約している保険にかかる費用

消耗品費   日常的に使用し消耗消失するものを購入する費用

車両費    車両に関連する費用全般

雑費     各科目に分類しづらい少額の経費


 

これらが人件費以外の費用科目となります。

上記の1の人件費と2の人件費以外の経費を合算したものが固定費となります。


 

固定費と営業利益


次に営業利益について触れたいと思います。

営業利益(歯科でいう医業利益)は、以下の計算式で成り立ちます。

売上-変動費(外注技工費+材料費)=売上総利益(粗利)

売上総利益-固定費=営業利益(医業利益)


 

固定費は、毎月多少の差異はあれども必ずキャッシュアウトする費用となります。

※唯一、減価償却費については実際にはキャッシュアウトは伴わない科目となります。

資産を耐用年数で割り、毎年の償却額を計上していく形になるので、諸表上は経費となり利益の圧縮が可能となります。逆に減価償却費が大きい場合は、利益の圧縮になりすぎて赤字計上となるケースもあります。


 

諸表上の金額と実際の現金預金が合わないのは、この減価償却費と元金返済の額が大きく影響していると言えます。


 

変動費と固定費がごっちゃになってはいけません

会計事務所様から弊社に直接、顧客の試算表を毎月お送りいただいているケースも多くありますが、中には、変動費と固定費が混同した作りになっている事務所様もあります。


 

その場合は、こちらで組み直して変動費と固定費を分けるようにしていますが、本来の形のままでは、その諸表からは何も読み解けないということになります。

納税の観点で言えば、全て経費ということで間違いではありませんが、医院の現状把握や今後の戦略を組むとなると、全く使えない資料となってしまっているわけです。
推測ですが、そういった事務所様からは、損益分岐のお話は出ないケースが多いと思います。


 

会計事務所様の考え方やフォーマットにもよるので、全否定は出来ません。
※こちら側から変動費と固定費をお知らせするレベルにあるのが望ましいです。


 

ですが、試算表を活かして今後の戦略を組むのは非常に重要なことですので、自院の試算表を見て、変動費と固定費が混同した状態になっている場合は、会計事務所様にその旨お伝えして修正してもらうようにすることをお薦めします。


 

損益分岐売上高の策定

自院の売上がいくら上がれば損益トントンなのか?

これは経営をしていく上で常に意識していかなければいけない部分です。


 

損益分岐点売上高の計算式は、

固定費÷変動費率 となります。

 

固定費とは、今までお話ししてきた(人件費+他経費)のことです。

これを出すのに、固定費と変動費がごちゃ混ぜになっていて、ご自身で振り分け出来ない場合、損益分岐売上をご自身で出すことが出来ないわけです。


 

※損益分岐点売上高の考え方(算出の仕方)は色々あります。

1、単純に固定費を変動費率で除すケース

2、専従者給与と元金返済を合算して固定費とし、変動費率で除すケース


 

キャッシュフローの観点から言えば、2の専従者給与と元金返済を合算して考えるのが鉄則かと思います。ただ、元金返済は、所得にかかる税金を引いた後の利益から支払います。

ですので、税率等によりドンピシャな損益分岐は出ないと言えますが、必ずキャッシュアウトするものとして、組み入れて計算するのが最も間違いがない方法だと言えます。


 

以下のケースで考えてみましょう。

◯変動費率:21%

◯固定費:人件費 1,500,000 他経費 2,500,000(内 減価償却費 800,000)

◯専従者給与:200,000 経常利益から差し引かれる項目

◯元金返済:700,000  損益計算書に載らない出費


 

1、単純に固定費を変動費率で除すケース

(1,500,000+2,500,000)÷(1-0.21=506万となります。


 

2、専従者給与と元金返済を合算して固定費とし、変動費率で除すケース

(1,500,000+2,500,000+200,000+700,000)÷(1-0.21=620万となります。


 

3、減価償却費を除いてキャッシュの観点で見たケース

(1,500,000+1,700,000+200,000+700,000)÷(1-0.21=519万となります。

※この場合、損益は赤字となります。


 

かかる税金等で変わってくる部分があるので完全な数値ではありませんが、大枠の目安にはなります。
今知りたい損益分岐点売上高はどこなのか、上記の計算で可視化してみるのが望ましいと考えます。


経営で重要なのは、売上(粗利)と固定費のバランスです。


 

様々な角度から紐解き、自院の理想とする形をイメージして経営を行っていければ、先読みも出来るようになります。また、キャッシュ面の不安や未来に対する不安も取り除けるようになります。


自院の固定費を把握していない先生は、この機会に整理してみては如何でしょうか?




「たかが数値。されど数値。」

医院の今から未来をつくる。
歯科医院発展応援団 吉澤 貢

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