コラムColumn

2025.10.30開業支援

融資を受けれれば勝ち? #元金返済まで考えたプランでなければ、詰みます...【前編】

今回から2回に渡って、開業に向けての銀行融資と事業プランについて書いていこうと思います。
開業を実現させる上で欠かせないものであり、且つ最も高い壁となるのが銀行からの融資です。自己資金で開業資金を賄えるケースでは融資は必要ありませんが、それは超レアケースであり、ほとんどのケースで銀行融資を受けて開業する形となります。

今の時代は、土地からのケースで総額2億前後、テナント開業でも1億前後はかかってきます。建築費用が高騰し続けているのが大きな要因となりますが、それ以外の部分で、器材も値上がり状態となっているのが現状です。

それに運転資金や諸費用を加味すると、事業にかかるイニシャル費用は、莫大なものとなります。以前のコラムでも書きましたが、10年前の倍以上のイニシャルコストがかかるのが今の開業となります。

ランニングも同様に、昔とは比べ物にならないレベルで費用がかかります。そのトップバッターは人件費です。最低賃金の上昇がここ数年での大きな変化となり、更に外注技工費や材料消耗品費も値上がりが続いている状況にあります。

これは何を指し示しているのか?

粗利を高くする必要があるということです。事業計画を作成して銀行から融資を受けれれば成功!ではないのです。先生方の中には、その辺りはしっかりと理解されている方もいらっしゃると思いますが、希望する開業スタイルのために無理をした額での融資を受けることになるケースもあるわけで、その際に元金返済額を意識した見立てになっているかが非常に重要なポイントとなります。

待合室は広めに越したことはないし、研修室も大きく欲しいな〜
建物は後から増築するのは、費用もかかるからもったいない
ユニットも後から足し算するより、借入して多めに入れておいた方がいいだろう
器材も先々どうせ買う予定なのだから、イニシャルで導入してしまった方がいいかな

ご自身の夢に引っ張られて、現実のキャッシュの部分を忘れてしまうケースとして多いパターンです。キャッシュが潤沢にあって、借入額からの返済額も想定した上で、更にご自身の診療スタイルで返済が可能か否か!そこまで考えた上で走るのはOKです。問題なのは、夢が先行してしまって、ご自身の腕(レベル)を見失ってしまうケースです。

それがどれだけ危険なことか例を挙げて考察してみたいと思います。

例)事業イニシャル総額 200,000,000円 自己資金 10,000,000円 融資額 190,000,000円
融資条件 返済期間 20年 据置 1年 金利 2.0%  元金均等 
※運転資金 15,000,000円を持ってスタート
※信用保証協会付き、運転資金の年数等細かい部分は要素から抜いて考察します。(わかりやすくするため)

*雇用スタッフ人数 4名 
人件費 4名で1,000,000円/月 ※社会保険料を加味すると、1,150,000円(概算)となります。

*人件費以外経費
800,000円(目安値として)
※減価償却費/支払利息は別途

初動良くスタート出来たと仮定します。
3ヶ月後 300,000点に到達(自費は無いものとします)
半年後   400,000点に到達(自費は無いものとします)
上記の数値を見て皆さんはどう思いますか?これなら大丈夫!余裕!いや足りない... どうでしょうか?

*変動費率
3か月時 22%(目安値として)
6ヶ月時 20%(目安値として)

では考察しましょう!
【3か月時の収支】
売上     3,000,000円
変動費   △660,000円
売上総利益 2,340,000円
人件費   △1,150,000円
他経費   △800,000円
医業利益  390,000円
支払利息  △320,000(概算値)
税引前利益 70,000円

??? 先生の生活費も出ないレベルになりますね!?

【6か月時の収支】
売上     4,000,000円
変動費   △800,000円
売上総利益 3,200,000円
人件費   △1,150,000円
他経費   △800,000円
医業利益  1,250,000円
支払利息  △320,000(概算値)
税引前利益 930,000円

!!! 生活出来そうな感じがしますね?
一気にお金持ちに近づくレベルに到達した気持ちになるかもしれません。

ただ、このままいけばどうなりますか?

元金の据置期間が1年あるので、この段階ではまだ支払利息のみを払っているということになります。この半年後からは元金返済が始まるわけですから、そこを忘れてはいけません。

上記融資条件の場合、元金返済額は 833,333円/月となります。
仮にこの後伸び悩んで、4,000,000円/月のままだったらどうなるか?

【6か月時の収支】
売上     4,000,000円
変動費   △800,000円
売上総利益 3,200,000円
人件費   △1,150,000円
他経費   △800,000円
医業利益  1,250,000円
支払利息  △320,000(概算値)
税引前利益 930,000円
元金返済  △833,333円
残り    96,667円

!?!?!?
これでは生活は無理ですよね...

190,000,000円の融資を受けて据え置き期間を終えても安全な売上はいくらになるのか?
逆算していくことで大枠の目安は出てきます。

元金返済 833,333円
生活費  600,000円(目安値)
合計   1,433,333円
上記が最低でも必要な税引前利益となります。

人件費:1,150,000
他経費:800,000
支払利息:320,000
合計:2,270,000円
上記が毎月かかる固定費用となります。

1,433,333円+2,270,000円=3,703,333円

これを粗利益率で割戻します。
3,703,333÷(1-0.22)=4,747,863円

これで収支トントンとなります。
実際には、賞与の支給やイレギュラーな出費等出てきますので、この額では不足します。
イメージとして、この額の120%ぐらいの売上を上げている必要性があります。

4,747,863円×1.2=5,697,435円
6,000,000円レベルの売上を上げていかないと元金返済には耐えられないということがお解りになるかと思います。

では、月に6,000,000円を上げるためには何人見る必要があるのか?
※自費は無いものとして考察してみましょう。

考察)月診療日数 20日 1回診療点数 800点として
月 600,000点÷20日÷800点=37.5人/日
1日 37.5人を診る必要があることがわかります。

ご自身のレベルでこの人数を診ることが出来るのであれば計画としては◯です。
この段階で、そんなに捌けないし自費の武器も無い... という場合は、事業として立ち上げてはいけないということになります。
また、メンテへ移行させる啓蒙力、新規を流入させるチーム力がなければ、そもそもこの人数は来ないということもあります。
治療だけで40人弱は不可能なわけなので、総合力を早い段階で構築できるかも大きなポイントとなります。

今回はここまでとして、また次回続きを書いていきたいと思います。
この段階で、自分はどうかな〜..という先生はぜひ次回も引き続き読んで頂ければと思います。
ではまた来月お会いしましょう。


「たかが数値。されど数値。」

医院の今から未来をつくる。
歯科医院発展応援団 吉澤 貢

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